五井野正 博士ファン倶楽部  浮世絵と印象派を通して学ぶ自然世界

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今様・今昔物語『精霊の守り人』原作上橋菜穂子             サグとナユグの二つの自然世界が重なり合う世界観 

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◆ このブログを書き始めて一年以上経過しましたが、今回始めて『アニメ』をテーマに書きたいと思います。というのは、始めにペンネームとして『精霊の守り人』を選んだのは、実はこのアニメの作品からでした。このアニメの作品の中には、古くから日本にある民俗学的な今昔物語的世界観が顕わされていると思ったからです。何故なら、今昔物語の世界には不可思議な物語が数多く残されているからです。(その意味では、この記事は、まったくの個人的志向によるアニメ紹介の記事です。)

◆ もともと『精霊の守り人』と言う作品は、すでにご存じの方も多いと思われますが、この物語は『児童文学書』として文化人類学者の上橋菜穂子氏が著した作品ですので、『精霊の守り人』は、現在の小中学生やその子供を持つ母親の世代の人々は、この作品については、知っている方が多いと思います。そしてそれ以外の世代では、あまり知られていない作品なのです。

( 今回、2014年度の国際アンデルセン賞に、上橋菜穂子氏がえらばれました。以下は、NHK・WEBの記事になります。国際アンデルセン賞に上橋菜穂子さん。国際アンデルセン賞は、スイスに本部のある国際児童図書評議会が長年、児童文学に貢献してきた功績をたたえて2年に一度、贈っているもので、その選考水準の高さから「小さなノーベル賞」とも呼ばれています。)

◆ 一般的に、エコロジーや地球環境の問題を扱った宮崎監督の『風の谷のナウシカ』『天空のラビュタ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』などの作品は、広くテレビなどで広告され映画館で上映されている関係で、様々な世代の人々が認識されていますが、この『精霊の守り人』は、児童文学作品で、この作品のアニメ化を手がけた人は、神山健治監督で、2007年にNHK教育テレビで放送されたもので、一般の映画館で興業された映画作品ではないので、その意味でまったくメジャーになっていない作品と言えるかもしれません。

◆ しかし、個人的にはこの作品は、あまりメジャーな作品ではありませんが、それだけ反対にこのアニメの中に顕わされている自然観・世界観には児童文学とは言え、かなり高度な世界観が顕わされていると思ったことがその関心を持ったきっかけになったものでした。或る意味でこの児童文学の作品の世界には、3次元の自然の世界(サグ)と4次元の自然の世界(ナユグ)が重なり合って存在している世界観がこのアニメ作品の映像で表現されているのです。そしてそれが児童文学として小中学生に広く読まれているということです。

◆ 主人公は、『バルサ』という女剣士で、この人の出自は、ある国の国王に仕えていた医者の娘であったのですが、父である医師が、その王の弟に脅迫されて、王に毒薬を毎日そそぐこととなり、王を毒殺することに加担してしまうのです。そして、仕えていた王は毒殺されて、弟が王位に就くのですが、毒殺の秘密を知るその医師を殺してしまうのです。

◆ しかし、バルサの父であるその医師は、毒殺に加担した時から自分の運命を悟って、自分の一人娘であるバルサの命を守るために知人であった、王を守るために仕えていた親衛隊のような有能な剣士の一人の知人『ジグロ』に、自分の命が危なくなったら、バルサを連れて逃げてほしいと懇願するのです。剣士であるジクロは、知人であるバルサの父である医師の懇願を一度は断るのですが、その懇願した友人が王の追手によって殺された時に、その友人の娘であるバルサを連れて亡命するのです。

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(ジグロの腕に抱えられているのが幼いころのバルサです。)

◆ しかし、新たに王位に就いたその悪王は、剣士ジグロと毒殺の加担した父の娘バルサを暗殺するために、昔からの王に仕えていたジグロの同志でもあった有能な8人の剣士をジクロとバルサの暗殺のために送るのです。そして剣士ジグロは、友人の娘であるバルサを守るために、かっての同志であり友でもあった8人と戦うことになってしまったのです。そしてジグロは、バルサを守るために8人のかっての同志・友を殺してしまったのです。(その剣士達も家族がその悪王によって人質に取られていた。)

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(上記は、ジグロが昔の同志や友人達が刺客となり、バルサを守るために殺さなければならない運命となった様子。後半部分は、帝からの暗殺部隊などの格闘シーンです。)

◆ これが上記の動画の中でバルサが説明をしている昔、8人の人間を自分のために剣士ジグロが、それもジクロの昔の同志であり友人であった人々を自分のために、自分が生き残るためにジグロが内面に大きな苦悩と悲しみを感じながらも殺してしまったジクロの心を深く感じて、今度は自分(バルサ)が剣士となった時に、そのジグロの苦悩と悲しみに報いるために、人の命を殺すことではなく、人の命を守ることを通して、このジグロの恩に報いようとして生きている人が主人公のバルサという女性なのです。

◆ 私は、偶然このアニメを日曜日の朝にNHK教育テレビで放送しているなと途中から見たのですが、見ているうちにその内容が、カルマの法則が反映されているようなとても人間的なドラマのように感じられてきて、深い関心を持つようになったのです。特にバルサという女剣士は、ジクロという人間の内面の奥深くに秘められている苦悩と悲しみを引き継いで、その恩に報いるために生きているわけです。

◆ そしてその姿勢がその後に展開してゆくドラマの中にそれが明らかとなってゆくです。それはこの物語の中で、『人を切らなくとも、殺さなくとも済む剣』を鍛冶屋である刀師が作ろうとする話が出てきますが、その刀師は、ジグロやバルサの内面の葛藤や苦悩を深く感じて、そのような刀を作ろうとするのです。下記第八話になります。


(精霊の守り人・第八話)

◆ もちろん、物語の始めでは、このような込み入った話はありませんが、そのような過去のバックグランドを持つバルサという女性が、その8人目の命を守る仕事を受けることになったのが、動画の中で述べられている『チャグム』というある国の皇太子である子供なのです。この皇太子である王子は、ある日、水の精霊である『水妖』の卵をうみつけられてしまうのです。


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(精霊の守り人の自然や社会背景は、チベットなどの中央アジアの山岳の国々をモデルとしているが、人里の街の生活や自然の生活環境は、江戸時代の日本の風景が作画の基本となっている。)

◆ ところがこの水妖の卵とは、動画の中では体内に青白く光る珠のように描かれていますが、それは物質的なものではなく、4次元的な形態のものなのです。そして水妖とは、水を司るもののように描かれていますが、物語の流れを見てゆくと水の世界を支配コントロールしている龍神のような存在で、個人的な解釈となりますが、この青く輝く珠は、龍神の卵のようなものなのです。

◆ ところがこの国の王子であり、皇太子である皇子に『水妖』の卵が植え付けられたということで、この国を支える星読み博士と呼ばれる人たちが、国家を安穏に継続してゆくためには、この水妖の卵は大きな障害となるということを国王である帝に進言して、実の子供であろうとも国家の安定のためには抹殺する必要があると伝えて、そこから帝の手下である『影』の暗殺部隊が動き出すのです。

◆ しかし、そのような帝の動きを皇子の母親は、察知してその救いを内密に世間に求めて、たまたまに牛車に搭乗して移動中であった皇子が橋の途中で牛を暴れさせて、谷底に転落させて溺死させようとした処を主人公のバルサに助けられてそのバルサに皇子の母親が皇子である自分の子供を帝の暗殺部隊から守ってほしいと懇願している処が動画に述べられているシーンなのです。

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(主人公のバルサとバルサが8人目の命を守らなければならない人となったチャグム王子)

◆ つまり皇子は、或る意味で龍神の卵を産みつけられてしまったために、帝から国家の安泰のために暗殺対象となってしまった処を、バルサに出会い、バルサにとっては8番目の救済対象となったということを述べているのです。

◆ そして題名でもある『精霊の守り人』とは、個人的に解釈するのであれば、水の世界を支配コントロールする水妖である『龍神』の卵を守る人と言う意味であるということになるのです。つまり、ここでは『精霊の守り人』とは、龍神の卵を産みつけられたチャグム王子であり、またそれはその卵を守る役割を与えられたバルサでもあるのです。つまり『精霊の守り人』とは、『龍神の卵』を守る人のことを指すのです。でも、その卵の意味とは?


(上記は、精霊の守り人第5話より)

◆ それでその水妖でもある『龍神の卵』とは、どのような性質を持っているのかということが、私がこのアニメにとても深く関心を持つことになったきっかけでもあり、今の児童文学の世界には、このような自然観・世界観が顕わされているんだと驚いたのです。特にこの龍神の卵については、物語の世界では呪術師であるアイヌ的な世界が深く関わりを持っています。

◆ 簡単に述べるとこの龍神の卵とは、3次元の自然世界である(サグ)と4次元の自然世界である(ナユグ)を結びつける『結び目』の働きがあるのです。ですから、龍神の卵を産みつけられた皇子は、3次元の自然世界に居ながら、4次元の自然世界が見えてしまい、3次元と4次元の往復ができるようになってゆくのです。それが龍神の卵の持つ作用で、物語の中では『結び目』と表現して、龍神の卵がある処が結び目になってしまうのです。


(上記は、精霊の守り人第11話より)

◆ もちろん、このような世界観は、今に始まったものてはなく、昔から日本の今昔物語の中にはあったものですが、児童文学という形で、現在のスピリチャルな自然な世界として表現されている処がすごいのです。それも昔からあった東洋的な世界観として。それはこの精霊の守り人の作者が文化人類学・民俗学者であるいう視点で描かれていて、作品がしっかりと構成されいるのです。どちらかと言うと昔の道教的世界観が入っています。でも新鮮に感じるのです。でも、これは今様の今昔物語です。

◆ そしてこのように昔から日本や東洋の世界にある重複して存在している自然観・世界観の土台の上に、この物語が構成されているのです。それ故にこの世界観をアジアン・ファンタシーと表現しています。それはあくまでも重複して存在している自然の世界であるということです。そしてその重複して存在している自然世界を結びつけている『結び目』の世界観がこの『精霊の守り人』に魅かれた一番の理由でした。

◆ それも児童文学の世界の中に、このような世界観が簡単に顕わされているのです。でも『龍神の卵』って何なのでしょうか・・・それは複数に重複して存在している自然世界を結びつける『結び目』としての働きが龍神の卵にはあるということなのてしょうか・・・・いったいこの二つの世界を結びつける結び目としての龍神の卵とは何なのでしょうか?二つの世界、二つの領域を結び付けている世界があるのです。

◆ この物語は、原作者の上橋菜穂子氏や神山健治監督がサイトのインタビューなどの中で述べていますが、その生活環境の設定が日本の江戸時代となっているのです。ですから始めのシーンでは中央アジアやチベットなどの高山世界が一部描かれていますが、人里の世界や田園風景そして食材や食べ物の内容に至るまで、すべて日本の江戸時代となっているのです。でもこれは推測ですが、江戸時代の人々やアイヌの流れを受けている人々には、このような昔の日本には重複する自然世界を体験している人々が数多くいたのかもしれません。

◆ 参考文献『ユリイカ』2007年6月号



◆ 追記

国際アンデルセン賞
:上橋さんに 児童文学のノーベル賞

毎日新聞 2014年03月25日12時18分(最終更新 03月25日 12時52分)

「児童文学のノーベル賞」といわれる「国際アンデルセン賞10+件」の作家賞に、文化人類学者でファンタジー作家の上橋菜穂子(うえはし・なほこ)さん(51)が選ばれた。日本国際児童図書評議会(JBBY、東京都新宿区)に24日連絡があった。日本人の作家賞受賞は1994年の詩人、まど・みちおさん以来2人目。画家賞の赤羽末吉(あかば・すえきち)さん(80年)、安野光雅(あんの・みつまさ)さん(84年)を含めれば4人目となる。

 国際アンデルセン賞10+件は、国際児童図書評議会(IBBY)が、世界の児童文学者、画家らを対象に56年から2年に1度表彰する国際賞。作家賞と画家賞がある。個々の作品に対する評価ではなく、児童文学への永続的な貢献を観点に、作家の全業績に対して贈られる。

 上橋さんは、階級社会において人間の自由や力を求める作品が多く、子どもたちに力を与える物語が特徴。JBBYによると、今回の受賞は、日本の民話や、オーストラリアの先住民族、アボリジニの民話などに関する文化人類学者としての研究も生かされ、世界的な広がりが認められたものとみられる。

 上橋さんは川村学園女子大の特任教授。子どもの頃から物語やファンタジーに魅せられ、「精霊の木」で作家デビュー。「精霊の守(も)り人」で野間児童文芸賞新人賞を受け、2004年に読書感想画中央コンクール指定図書にも選ばれた「狐笛(こてき)のかなた」は野間児童文芸賞に輝いた。代表作に「獣の奏者」などがある。全12巻からなる「守り人」シリーズは360万部超のベストセラーになり、米国やフランス、イタリア、スペインなどで翻訳された。【山崎明子、鷲頭彰子】

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水と木の精霊の守り人

Author:水と木の精霊の守り人
 浮世絵の中に描かれている宗教・歴史・信仰・民俗学・古典などに深い関心があり、『精霊の守り人』のファンです。また、浮世絵の影響を受けたフランス印象派やジャポニスムに関心を持っています。
( Impressionnistesとは、正しい翻訳では、印象派と訳すのではなく、フランスの浮世絵師と訳すのが正しい翻訳であるそうです )
特に浮世絵の研究者でもあり、ロシア国立芸術アカデミー名誉会員の五井野正博士のファンの一人です。博士の講演の中で、ジャポニスムとは、日本趣味ではなく正しくは、~イズム(ism)とはその人の生き方・精神を顕わして日本趣味ではなく、日本主義と訳すのが正しい翻訳であるそうです。また内部被曝問題に関心があります。日本GAP・アダムスキーやオムネク・オネクに関心を持っています。

◆ このファンサイトの主旨
 
 このファンサイトは、ロシア国立芸術アカデミー名誉会員の五井野正博士の個人的・非公式非公認ファンサイトです。これまで博士の芸術論講座や講演会に筆者が参加して、個人的に主観的に思ったこと考えたことが書かれています。ですから客観的な公式・公認の情報ではありません。

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