五井野正 博士ファン倶楽部  浮世絵と印象派を通して学ぶ自然世界

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ロシア映画『ノスタルジア』アンドレイ・タルコフスキー                                          ロシア人と日本人の共有する自然観        

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 ロシア的人間より

◆『 過去、数世紀にわたって、西ヨーロッパの知性的文化人にとっては、原初的自然からの遊離は、何ら自己喪失を意味しなかった。逆にそれは、人間の自己確立を意味した。本源的に非合理な自然の混沌を一歩ずつ征服して、次第に明るい光りと理性の秩序に転じて行くこと、そこにこそ、人間の本分が在るのではないか。
  
 ロシア人はそれとは違う。彼らにとっては、原初的自然性からの離脱は、直ちに自己喪失を意味し、人間失格 を意味する。ロシア人はロシアの自然、自然の黒土と血のつながりがある。それがなければ、もうロシア人ではないのだ。西欧的文化に対するロシア人の根強い反発はそこからくる。

 文化の必要性を人一倍敏感に感じ、文化を熱望しながら、しかも同時にそれを憎悪し、それに反逆せずにはいられない。この態度はロシア独特のものである。・・・・つまりロシアにおいては、自然と人間とのつながりが存在の深層に根ざしているのだ。』


◆  上記は、井筒俊彦著『ロシア的人間』の冒頭の前書きの中に記述されている文章なのですが、この文章は、端的にロシア人の文化的な性格を示していると思います。そしてこれを読んだ人は感覚的に、ロシア人って日本人の自然に対する感覚と似ていると思うことでしょう。

 【ノスタルジアについての解説】

 ソ連の天才映画作家アンドレイ・タルコフスキーの長篇第6作『ノスタルジア』は、タルコフスキーがはじめてソ連国外でつくった映画である。83年カンヌ映画祭にイタリアから出品して、グランプリと同格の<創造大賞>を受賞、同時に、国際批評家連盟賞、エキュメニック賞を受賞し、英国のインターナショナル・フィルム・ガイド誌は、83年度のすべての国のベストワン作品に選んでいる。

水と、光と、霧と、闇と、火の、タルコフスキー独特の詩的宇宙が、『ノスタルジア』では、従来のカラー作品の深く渋い色彩美にイタリア撮影技術の艶と鮮かさを加えて映像美の極致に達したといえよう。

『ノスタルジア』(原題はロシア語をアルファベット表記してNOSTALGHIA)は、ロシア人がソ連国内を旅行した時には感じないが、ひとたび外国に旅行すると必ず強く襲いかかる感情で、死に至る病いに近いとさえ言える独特のものだとタルコフスキーは言う。『惑星ソラリス』や『鏡』『ストーカー』で登場したテーマを、イタリアに旅行したロシア人の愛の物語としてさらに発展させようというもので、タルコフスキーがトニーノ・グエッラと想をねりはじめたのは『ストーカー』カンヌ出品の直後だった。
( アンドレイ・タルコフスキー映画祭よりの抜粋)

◆ まず中央の画像の男性は、主人公であるロシアの詩人でゴルチャコフという人なのですが、彼はサスノフスキーというロシアの音楽家のことを調べているのです。このサスノフスキーというロシアの音楽家は、実はイタリアに亡命していたので、その足取りを追って、ゴルチャコフはイタリアを訪れていたのです。中央右の女性は、そのイタリア語の通訳の女性でエウジェニアという人です。

◆ そこでどうしてゴルチャコフがサスノフスキーを調べようとしたのかというと、その理由が題名の『ノスタルジア』と言う亡命したロシア人が故郷であるロシアの自然の世界から離れて、異国の世界で発症する独特の感情の問題があるのです。その感情は、ある時は社会不適応症を発症させてしまうのです。そしてその感情を『ノスタルジア』と述べているのです。

◆ 実はイタリアに亡命したロシアの音楽家サスノフスキーは、故郷ロシアに帰れば、奴隷の身分になるということがわかっていたのですが、彼は奴隷になることを覚悟に、せっかく亡命して自由を手に入れたイタリアでの生活を捨てて故郷ロシアに帰えるのです。そしてロシアの自分の故郷の地で自殺してしまうのです。

◆ そしてゴルチャコフが調べようとしたことは、どうしてサスノフスキーが奴隷覚悟でも、ロシアに帰ろうとしたのか、その理由とサスノフスキーという音楽家のイタリアでの軌跡を調べるために、彼が亡命したイタリアに調査に来たというのが、この映画の始まりなのです。

◆ そしてそこでの核となるものは、ロシア人は、ロシアの自然と深い繋がりがあって、その繋がりが切れれば、もうそれはロシア人ではないのだというロシア的人間の視点がこの映画の中はあるのです。つまりどうしてサスノフスキーは、ロシアに奴隷になるのがわかっても帰国したのか、それが『ノスタルジア』のためになのです。

◆ また、この映像の世界の中では、このロシア的自然の世界とは上段の映像を示しています。中央の木造のログハウス風の家が、実はゴルチャコフの自宅であり、それは、心の中にあるゴルチャコフのふる里の世界を顕しています。そして彼のふる里の家の周りには、林や森などがあり自宅の前には、池や湖水があるのです。それは私たちから見ると山水画の世界であり、その山水画の中には飼い犬がいて、いっしょにゴルチャコフと寝ています。これって、中国や日本の山水画の世界の中にも、動物が描かれているのと同じです。

◆ また一番下段の映像も、これは古い壊れたキリスト教会の中を流れている湖水の河の映像なのですが、タルコフスキーは、石のイメージの強いヨーロッパの文明に対して、森や林などの道教世界を顕す五行の中の『木』と湖水や河などの『水』の映像を表現して自然の世界を映像の中に表現しています。またロウソクの灯明は、『火』を顕していて、タルコフスキーは、映像の世界の中に、道教的な五行の思想を表現していることがわかります。恐らく現代の日本人的感覚では、映画の映像美の中に五行を顕そうとする人は皆無でしょう。

◆ そしてこの木造の家と林などのログハウスの木造的文化の世界が実はロシア的世界なのです。( 何故ならロシアの古い教会は、石ではなく木で作られている教会です。)そしてそれを取り囲むキリスト教会の城壁の石垣の世界とは、実は石の文明であるヨーロッパの文明の世界を意味しています。映像の世界は、教会の石造りの城壁の世界の中に、ロシアの姿を山水画の世界を箱庭の世界のように顕されしています。

◆ もし私たち日本人が上段の山水画の映像を見て感じることは、日本の箱庭文化の世界が顕されているように感じることでしょうし、そこに表現されている世界或いは表現しょうとしている世界とは、日本の『盆栽』の世界に顕されている世界観・自然観と同じ原理が顕されていることに気付くのではないでしょうか。そこに共通の感覚があるのです。

◆ 私は始めてこの映画を銀座の映画館で見た時に、そしてそのポスターを当時の映画雑誌ぴあなどで見たときに、どうしてロシア映画なのに、自然のふる里の世界に、現代の私たち文明人を自然の世界に回帰することの重要性を訴える『ノスタルジア』と言う映画をロシア人が作るのか大変関心があったのです。そしてその映像を見た時に、道教思想の影響を受けている人だと思ったのです。

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水と木の精霊の守り人

Author:水と木の精霊の守り人
 浮世絵の中に描かれている宗教・歴史・信仰・民俗学・古典などに深い関心があり、『精霊の守り人』のファンです。また、浮世絵の影響を受けたフランス印象派やジャポニスムに関心を持っています。
( Impressionnistesとは、正しい翻訳では、印象派と訳すのではなく、フランスの浮世絵師と訳すのが正しい翻訳であるそうです )
特に浮世絵の研究者でもあり、ロシア国立芸術アカデミー名誉会員の五井野正博士のファンの一人です。博士の講演の中で、ジャポニスムとは、日本趣味ではなく正しくは、~イズム(ism)とはその人の生き方・精神を顕わして日本趣味ではなく、日本主義と訳すのが正しい翻訳であるそうです。また内部被曝問題に関心があります。日本GAP・アダムスキーやオムネク・オネクに関心を持っています。

◆ このファンサイトの主旨
 
 このファンサイトは、ロシア国立芸術アカデミー名誉会員の五井野正博士の個人的・非公式非公認ファンサイトです。これまで博士の芸術論講座や講演会に筆者が参加して、個人的に主観的に思ったこと考えたことが書かれています。ですから客観的な公式・公認の情報ではありません。

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